第50章

器の中で、緑色の火がちろちろと揺れていた。

床に横たわる秋山凪のシャツが、ふわりと――まるで糸で吊られたみたいに、すっと起き上がる。袖が、ゆっくりと持ち上がっていき……。

いつの間にか外の空は黒い雲に覆われ、ひゅう、と風が吹き込んだ。神崎聖子は思わず両腕を抱き、身震いする。

――なにこれ。気味が悪すぎる。

けれど紬だけは、にこにこと笑っていた。器の上で揺れるシャツに向かって、小さな手をふりふり。

「はやく、かえってねー」

その瞬間。

シャツが、すとん、と落ちた。器の中でぱちぱちと燃えはじめる。

床の秋山凪の指先が、かすかに――ほんの、ほんのわずかに動いた。

蒼海が「えっ」と...

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